一般に日本人は謝る言葉をよく使います。お礼を言う代わりに、よく謝るんです。例えば、おばあちゃんがバスに乗ってきた場合を考えてみましょう。
もともと座っていた人は席を譲ろうと立ち上がります。するとおばあちゃんは「ありがとう」よりも「すみません」と言う人の方が多いはずです。
この時のおばあちゃんの気持ちはおそらくこうです。「私が乗ってこなければ、あなたはいつまでもそこに座っていられたのに。私が乗ってきたばかりに迷惑をかけてしまって…申し訳ありません。」
このように、日本人は感謝の言葉を述べる代わりによく謝る言葉を使います。これは日本独自の文化でもあります。なぜか、この方が聞く人も心地よかったりするのです。不思議ですね〜。
日本人が外国でメイドを雇った時の話
台所でコップがパリーンっと割れました。メイドさんは「コップが壊れました」と言うでしょう。これは外国では普通のことかもしれません。しかし日本人は、このように言われるとあまり気持ちのいいものではありません。
日本では「コップを割ってしまいました。ごめんなさい。」と言うのが普通なのです。つまり、コップが割れたのは自分の不注意のせい。「ごめんなさい」なのです。これが日本人の場合、相手に大変快く響きます♡
「余計なことは言わない」を善しとする日本文化☆
日本の警察では、同じような罪を犯した人であっても、謝り方の良い人には罪を軽くする傾向があります。つまり、「謝った人はその罪を後悔している」「もう二度と悪いことはしないだろう」と考えるのです。
ところが近年、この「謝罪」にある変化が起こっているようなのです。例えば、自動車事故を起こした場合を考えてみましょう。
交通事故を起こした側は「素直に非を認めてしまうと自分の不利益になってしまう」「絶対に謝ってはいけない」と考える人たちが増えてきているのです。「自分は悪くない」と頑張る方が得だとする考え方が普及してきているのです。
これは欧米文化の影響なのでしょうが、なんだか日本の古き良き伝統文化の一つが失われた気がして少し切なくなってしまいます。
ところで日本人には、謝る場合にただ「すみません」と言って頭を下げた方がいい、余計な弁解はしない方がいい、とする考え方があります。”弁解 = 言い訳 = 悪いと思っていない” となるわけです。
そこで日本では、口数はなるべく少なく、深く頭を下げて、悔悛の情が表に出るようにする謝罪法が最上だとされています。
この背景には、”サムライ魂” といいますか、男は無駄口をきくものではないとする文化があるのでしょう。公の席では女性は男性を差し置いておしゃべりするのは良くないとする文化もあることでしょう。
事実、昔から日本の女性は、自分の意見はあってもそれは口にしないで目上の人の言うなりになるということが、最高の女性の徳というふうに考えられてきました。
ですから、(上に立つ立場にある) 男性は、女性の気持ちを考えて振舞わなければならないのです。
男「何を食べたい?」 女「なんでも…」
男女のカップルが喫茶店やレストランに入った時のことを考えてみましょう。
男「何を食べようか?」
女「何でもいいです。(お任せします)」
そうすると男性は、この女性は何が好きなんだろうかと考えて、(この女性が) 好きそうなものを考えて注文しなければなりません。かつては確かに、それが正しく望ましい男の作法でもありました。
もっとも、中にはそんなことちっとも考えずに、自分本意に注文してしまう男もいましたけどね😃
日本の女性は “I love you” とは言ってはいけない?
昔々は、日本の女性は「好きです」「愛しています」といった言葉を発してはいけないとされていました。そんな時代の面白い逸話をここで一つ紹介しておきましょう。
明治時代に長谷川二葉亭という作家がいました。この人はロシア語が堪能な人で、ロシアの作品を次々と日本語に翻訳していました。ところが、ある作品を翻訳していた時に困ったことが起こってしまったのです。
年頃の若い男女の恋愛のクライマックスの場面でのこと。男が「I love you」と言うと女もそれに答えて「I love you 」と言って接吻を交わす…
ここで二葉亭は、この女性が発する「I love you」をどう訳しようかと2日2晩苦悶したそうです。現代であれば全く問題ないわけなのですが、当時の価値観からすれば、女性が「I love you」と言うことは「教養のない女だ」「はしたない」となってしまいます。このヒロインのイメージが一気に壊れてしまうことになるのです。
そこで二葉亭はこの女性の「I love you」をどう訳したのでしょうか?
2日2晩考え抜いた末、到達した訳は「死んでもいいわ」だったのです。
日本人の言葉は非論理的?
日本人の言葉はよく “非論理的” だと言われます。例えば本屋でお客さんが「スペイン語の会話の本はありませんか?」と尋ねたとしましょう。そして、必死になって探した結果、残念ながら(その本は) なかったとしましょう。
このような場合、日本の店員はよく「申し訳ございません。ございませんでした。と言うはずです。ないのは現在の話ですが、なぜか過去の言い方 (ございませんでした) を使ってしまいます。
この背景には、「本来であればちゃんとその本を用意しておくべきだったにも関わらず、私どもの不注意で用意しておりませんでした」「申し訳ございません」と過去の不注意に遡って謝罪を表明しているのです。
つまり、言葉を短くはしょっているのでわかりづらいのですが、この「ございませんでした (過去形)」にはそのような意味が込められているのです。外国人が考えるであろう「ございません (現在形)」とは違うニュアンスが含まれているのです。
言葉と文化の違いって本当に不思議で面白いですねー♡
最後に、
「余計な言い訳をしない」文化はどうやら過去のものになってしまったようです。国際社会においては、はっきり言わないと真意が相手に伝わりませんし、言い訳しないと冤罪にだってなりかねません。
日本の心は大切にしつつも、海外では「Yes/No」をはっきり伝えないと損してしまいますよ。気をつけましょう☺️