794年から1869年まで日本の首都だった京都は「芸者文化発祥の地」とされています。京都では芸妓(げいこ)と呼ばれる芸者さんは、宴会などで様々な芸を披露し客をもてなすプロの女性エンターテイナーなんです!
京都の代表的な繁華街である祇園では、多くの旅行者たちがお座敷に向かう芸妓や舞妓(芸妓の見習い)の写真を撮ろうと、道の両側に列をなす光景が見られます。
今さら聞けない「花魁(遊女)」と「芸者」の関係
まずはじめに遊女とは、古来から近代にかけて、男性客に対して性的サービスを中心とした接客で生計を立てていた女性のことです。
遊女を抱える遊郭では、他にも芸者や男芸者(幇間)など様々な職種の人間が出入りしていましたが、中でも芸者は、唄や三味線、踊り、話芸などの芸事で客をもてなすプロフェッショナルなのです。
昔の遊郭遊びでは、揚屋で客が指名した花魁が到着するまでの場つなぎとして芸者や幇間が呼ばれ、十八番の芸を披露して客を楽しませ、花魁と客が妓楼へ去った後は置屋に引き上げる、という流れが一般的でした。
つまり、遊女と芸者はどちらも接客業ではありますが、時代や地域で位置づけが様々に変化しているため、両者の定義については時代背景と照らし合わせながら理解することが大切なのです。
芸者のプライド ☆
「芸は売っても身は売らぬ」
芸者の矜持を表わす言葉として有名ですが、明治以降の近代のような役割分担が確立するまでの古い時代には、芸者であっても水面下では売春行為を行うなど、線引きは曖昧でした。
しかし、吉原など公営の遊郭が機能していた時代には、遊女の方が芸者よりも格が上で、芸者が色を売ることは遊女の仕事を奪う…という重大な職域侵犯につながるので、トラブルも日常茶飯事だったようです。
やがて、遊郭に厳格なしきたりやシステムが確立すると、芸者は芸道の追求に徹し、総合的なお座敷芸のスペシャリストとして一本立ちし、後進を育成しながら伝統を守っていくことになりました。
ちなみに芸者のことを「左褄」とも称しますが、左手で長着(裾を引く長い着物)の褄(裾の端)を持てば、襦袢の合わせ目から男性が手を入れることができません。
これに対して、花嫁や花魁(遊女)は右褄をとります。
つまり、「左褄をとる」とは「色を売らない」芸者としての誇りを込めた言葉なのです。
ちなみに、
芸者の道を志す人は、舞妓(関東では「半玉」)として、16歳から18歳頃までの間、見習いとしての修業を積みます。
舞妓時代は舞踊や三味線、唄などの芸をみっちり仕込まれると同時に、芸者の世界の厳しいマナーやしきたり、季節の決まりごとなどの細かなルールを叩き込まれます。
舞妓を卒業したら芸妓(=芸者)として独り立ちし、置屋に籍を置いて、お座敷がかかれば出向いて接客し、芸を披露します。
今では時代の流れから、旧来の伝統や制度は薄れ、後継者不足の問題に直面している芸者業界ですが、芸者文化を持つ地方では、専門学校の設立や法人化などによって人材育成を続ける試みが注目されています。
現在も、京都は上七軒、祇園甲部、祇園東、先斗町、宮川町など、東京では新橋、赤坂、神楽坂、芳町、向島、浅草など、芸者は全国各所の花街を象徴する存在として、伝統文化を守り、独自の世界を築き上げているのです。
芸者の写真を撮る際の暗黙のルール
芸者好きの外国人は「パパラッチのような旅行者が多い」ようですが、マナーは守らないといけません!街で見かける芸者さんたちは大抵出勤途中であり、地元のマスコットとして観光協会に雇われているわけではない…ということを頭に入れておく必要があります。
もちろん、芸者さんたちは、芸者が日本の特別かつ特有の文化で、人々の関心の的になることは分かっており、(写真を撮られることは)生活の一部と考えています。それでも、一般の人々も芸者さんたちを尊重する必要があるのです。
くれぐれも、写真を撮るために、歩いている芸者さんの前に立ちふさがり、進路を妨げるような行為は慎みましょう!
芸者さんに会える場所は?
「芸者に会える場所」として有名なのは、京都の花街です。芸妓の多くは、午後6時前頃にお座敷に出勤するため、その時間帯が芸妓さんに会う絶好のチャンスなのです。
そして、芸者さんの写真をうまく撮るためには、背景にも気を配る必要があります。くれぐれも、背景をおろそかにしてはいけませんよ☺️
そして、芸者さんの撮影場所として最も人気なのは、伝統的な町家が数多く立ち並ぶ祇園でしょう。京都には祇園東、祇園甲部、上七軒、先斗町、宮川町の5つの花街がありますが、特に祇園東と祇園甲部は5つの花街の中で最大!知名度も高いです!
芸妓と舞妓の見分け方 ☆
芸者さんたちは皆、引退するまで置屋に籍を置き、そこで茶道、生け花、和楽器といった日本の伝統的な芸事の厳しい訓練を受けます。しかし、見習いの舞妓さんが一人前の芸妓さんになるには最低5年の修行が必要なのです。
それはさておき、芸妓さんと舞妓さんをどう見分け方、知っていますか?
まず、舞妓さんは髪に花のような形のかんざしをいくつも付けていますが、芸妓さんは髪にあまり飾りを付けません。
また、後ろから見ると、舞妓さんの帯は「だらりの帯」と呼ばれ、足首のあたりまで垂れ下がっているのに対し、芸妓さんの帯は普通の着物の装いと同様、背中で四角に折られています。
また、舞妓さんは「おこぼ」と呼ばれる木製の下駄を履くのに対し、芸妓さんは常に草履を履くようです。
芸者の偽物多しっ!
よく、京都を訪れた旅行者たちが「街で親切な芸者さんに出会った」と喜んでいたりしますが、実は、その多くは芸者の格好をした香港、東京、台湾などからの旅行者だったりするのです。
仮にもし、芸者さんや舞妓さんがあまりにも親切だったり、路上でポーズをとってくれるようであれば、「その芸者は偽物」…の可能性が高いのです。
その女性は「スタジオ芸者」「コスプレ芸者」である可能性が大なのです!
そのような「1日限りの芸者」たちはよく歩き回り、誰かが写真を撮ろうとすると立ち止まってくれることが多いのです。
本物の芸者さんは普通、そんなことはしません。本物の芸者さんであれば、お座敷に向かう途中か帰る途中なので、余計なことをしている暇はないのです。
本物と偽物を見分ける方法はもう一つあります。それは、本物の芸者さんの顔は洗練されていてスベスベしている!ということ。つまりは白化粧の質が違うようです (笑)。
正攻法で芸者さんに会うには…
2005年のアメリカ映画「SAYURI」を見て、Geishaに興味を持った外国人もけっして少なくはないでしょう。また、祇園がこの映画の舞台だったことから、多くの外国人旅行者が祇園を訪れたいと思うのも不思議ではありません。
しかし、この映画の影響で、外国人旅行者は芸者に対して多くの誤解を持ってやってきます。「実際の芸者は英語とは違うんですよ」と説明するのがなんと面倒なことか (笑)。
ともあれ、
正式に芸者さんに会おうとすれば、単純にお茶屋を予約するのが一番です。もちろん、お茶屋はけっして安くはありませんが、これこそが正真正銘の芸妓体験であることは間違いありません。
でも、、、
一般に、京都のお茶屋は一見さんお断りで、なじみ客の紹介がなければお茶屋で「高級な」芸者遊びをすることはできません。それでも、「芸者遊びのためなら出費は惜しまない」という方であれば、お金の力でお茶屋に入ることも可能でしょう(通常は10万円から)。
京都の料亭で芸者遊びを体験したい旅行者は、京都の5つ星ホテルや高級旅館の接客係に頼めば、お座敷を手配してもらえますよっ☺️